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提物屋ニュースレター バックナンバー Vol.6
子供相撲
大相撲九月場所の初日も、もう明日となりました。
そして今日は9月9日の重陽の節句です。
重陽は、9という陽の最大数が重なる日であることから
陽の象徴である男子が取り組む相撲が
京都の賀茂別雷神社(上賀茂神社)のように
奉納されたりもします。
さて根付にも子供相撲の意匠が見られます。
江戸時代、子供相撲は、明和年間(1764~1772)には、
すでに江戸の浅草寺の御開帳時に見世物として
興行されていました。
また天明6年(1786)の秋には、江戸の駒込竹町の越中屋という裕福な町人が、
10~15才位までの子供を4~50人集め、
取り方や作法を教え、
白山権現で相撲を行わせた逸話も残っています。
この時、境内には幟(のぼり)がたくさん飾られ、
子供力士は立派な化粧廻しをつけ、
土俵入りもある、本場所さながらの本格的なものだったそうです。
子供相撲 根付 象牙刻 18世紀 36㎜
11代将軍徳川家斉(1773 ~1841)は、
将軍職についた15才の頃から
すでに子供相撲の上覧記録があり、それ以降、
特に盛んとなりました。
享和2年(1802)9月、家斉30才の時、
江戸中の優秀な子供力士が吹上に集められ
子供相撲が華やかに行われたことが、
優秀な子供力士の四股名(しこな 力士の名前)とともに
記録に残っています。
また天保14年(1843)9月には、
12代将軍家慶(1793 ~1853)により
浅草の観音堂脇に土俵がしつらえられ、
子供相撲の上覧がありました。
その時の呼出は9才の追儺金太郎、
行事は13才の芝村源之助で
米百俵と銀百枚が一同に下されたそうです。
‘‘TINY TITANS, The Sumo Netsuke Collection of Karl-Ludwig Kley’’ R. Bandini著 より
子供相撲 鏡蓋根付 銘 秀民 19世紀 36㎜ 個人蔵
このように2代つづけて将軍が子供相撲に興じた影響もあり、
大名の間でも、子供相撲の観覧記録があります。
力士も観客も、大人から子供まで、
相撲は江戸後期まで娯楽として隆盛となりました。
提物屋 吉田ゆか里
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