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提物屋ニュースレター バックナンバー Vol.7
胡桃の根付
実りの秋も深まってまいりました。
根付は、珍しい材料を用いた作品も人気がありますが
その一つに胡桃があります。
意外にも、上田令吉著『根附の研究』の根附師リストには
胡桃彫について言及されている人物はいませんが
晴岷、左一山、伊勢の正直などをはじめ、胡桃彫の根付は
海外の根付の本では「KURUMI」の語とともに記録されています
マイナーツハーゲン氏のカードインデックスより
先のとがったものは、日本に自生する鬼胡桃の特徴で
顔に見立てたユニークな作品が知られています。
達磨 根付 胡桃刻 19世紀 43㎜
シンプルなように見えますが、目の象嵌が二重になっていたり
鏡のように艶やかになるまで、磨きがかけられ手がかかっています。
また胡桃の殻は
精密機械の研磨や、スタッドレスタイヤの材料にされるほど
硬いことで知られていますが
その硬度の高さゆえに
精緻な彫刻には、目を見張るものがあります。
菊図 根付 胡桃刻 19世紀 31㎜
地模様の麻葉彫も見事です。
紐通しの周囲は銀覆輪で補強されています。
初夢図 根付 銘 松山 胡桃刻 19世紀 41㎜ レイモンド・ブッシェル旧蔵品
表の左側には「富士山と老松」、右側には「鷹」
裏の右側には「茄子」
萬 木 栄 春 一 翆 同 (萬木 春に栄えて 一翆同じ)
不 同 事 在 歳 寒 中 (不同の事は歳寒の中に在り)
と、十四もの極小の漢字が楷書で美しく刻まれてます。
ところで胡桃の意匠を、
19世紀に飛騨で松田亮長やその一派によって
制作された根付に特に見られます。
黄楊木で彫刻された胡桃の根付 銘 亮芳 19世紀 55㎜
胡桃自体をモチーフにした作品は
根付の意匠においては、
意外にめずらしいです。
飛騨では、蛙と胡桃を
組み合わせるユニークなデザインも
時々見られます。
提物屋 吉田ゆか里
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